【書評】鈴木宣弘『食の戦争』(文春新書、2013)

 鈴木宣弘さんの『食の戦争ー米国の罠に落ちる日本』という本を読みました。著者の鈴木さんは農林水産省に入省し、現在は東大大学院の教授(専門:農業経済学)をされています。

 

 最初に、世界的には「食料は軍事・エネルギーと並ぶ国家存立の三本柱だ」(15頁)ということを押さえておくべき。日本はその認識が乏しい、とおっしゃっています。確かに、スーパーに行けばいつでも新鮮な食べ物が置いてあるので、全く僕にはそういう認識はありませんでした。

 しかし、アメリカはその食料戦略で覇権を握り、世界に影響を及ばしています。その戦略の鍵の一つは「政府による手厚い支援(17頁)」で、例えば、米・トウモロコシ・小麦の3品目について1兆円も輸出補助金を出しています。そうすることで、もともと安いのに、もっと安く世界に売りさばけるのです。

 では、日本も真似しようとしても、アメリカ主導のルールにより、補助金を禁止されていて、真似できません。

 そこで、筆者は主要作物の備えが大切だとしています。こことひとつ前の項目は、とてもおもしろい部分なので、詳しい理論は本書で読んで下さい。

 

 まだ紹介したいのですが、全部書くのはいけないので、本書で議論になっている部分(一部)だけ抜き取ります。

議論1:貿易自由化の徹底は世界の「食」を安定させるか?

議論2:『爆食』は進行し、単収向上は技術的に限界だし、温暖化や砂漠化も進んでいる。食料需給のひっ迫による穀物価格高騰は『構造的』なもので、価格はもう戻らないのか?

この議論については、『2030年世界はこう変わる』も合わせて読むとより分かりやすいです。

 

 本書は少し難しいので、気合いを入れて読まないと意味がないです。ですが、とても刺激的な内容ばかりです。これを読めば、tppに参加すれば食にどのような問題が起こるのか?、遺伝子組換え食品の問題点、日本の農業の問題点が分かります。食料問題に興味のある方、子供を持つ心配性の親など広くお勧めです。