【書評】東浩紀編『福島第一原発観光地化計画』(genron、2013)

  東浩紀さんが編集した『福島第一原発観光地化計画』を読みました。本書は思想地図β4-1の『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』の続編となっています。B5版190頁フルカラーで写真や論考が満載で、とてつもない情報量の一冊になっています。

 

 「福島第一原発観光地化計画」とは、福島第一原子力発電所の跡地を、後世のため「観光地化」するという計画のことです。「観光地化」とは、事故跡地を観光客へ開放し、だれもが見ることができる、みたいと思う場所にするという意味で用いています。遊園地を作る、温泉を掘るという短絡的な意味ではありません。

 提言の軸は、福島第一原発から南に20キロ、広野町と楢葉町の境界に位置するサッカートレーニング施設「Jヴィレッジ」の大規模な再開発です。2020年に「Jヴィレッジ」で災害復興博覧会を開催すること、同地区へのアクセスを改善することを目指しています。そして行く行くは、2036年までに、ビジターセンターと博物館、ショッピングモール、ホテル、展示施設などからなる巨大な「ふくしまゲートヴィレッジ」を建設することです。

 

 ふくしまゲートヴィレッジを作るにあたって、ガイドさん・宿泊施設・食・モニュメント・博物館など色々必要なものが入ります。それを一から考え設計し、専門家に問い合わせ実現性を探り、実現性を高めていくさまが書かれています。

 97頁には、ふくしまゲートヴィレッジの地上階の平面図が挙げられていて、ここまでやるのかと驚愕しました。

 

 補遺には、復興の5つのポイントが書かれていてとても参考になります。これは著者がチェルノブイリから西に80キロ以上離れているコロステン(放射能汚染からの復興例として注目を集めている市)に再訪した時に、副市長から聞いたものです。

①徹底した放射線量モニタリング

②公衆衛生状態の監視

社会心理学的なケア

④経済発展の促進

⑤さまざまな地域と協力体制を築き、合同で優先事項を決めること

 この5つです。

これを福島第一原発観光地化計画に当てはめると、かなり良い計画だと言えます。

 

 以上です。情報量も多く、実際に良く詰められている計画という印象も持てます。多角的に考えられていて、参考になるところも多いです。オススメです。

 

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2