【書評】岡田匡『糖尿病とウジ虫治療』(岩波書店、2013)

  岡田匡さんの『糖尿病とウジ虫治療』を読みました。僕がいつも読んでいる書評サイトの「honz」さんでちょっと前に紹介されていて、面白そうなので、いつか読みたいと思っていました。そしたら、先日、別件で大学図書館に行ったときに、新刊コーナーに置いてあったので、読んでみることにしました。

 

 ウジ虫と聞くと、とてつもなく気持ち悪いイメージがあります。(参考画像、wikiページ)honzさんにも書かれていましたが、「はだしのゲン」や戦争の写真で傷口にわく大量のウジ虫を見て、トラウマになったのは、僕だけではないはず。

 そんなウジ虫が傷口を治す効果を持っているというのです。

 

 糖尿病性潰瘍の治療に有効で、海外では床ずれ、深部組織におよぶ外傷、感染をともなう術後創、切断端、熱傷潰瘍、下腿潰瘍、慢性骨髄炎などにも広く使われています。なぜ効くのか?というと、ウジ虫は死んだ細胞、組織を食べ、分泌液にも抗菌作用があるからです。

 当然、この治療にも問題点はあります。深刻な副作用は見られないものの、一過性の発熱や、痛みを感じること、出血(1%以下の頻度)が報告されています。良く誤解されるようですが、「体内にウジが自然に寄生する」というのは、まったく別の種がもらたす真性寄生性の病気だそうです。この治療に使われるハエは、人間が宿主ではないので、住みつきもしませんし、ウジになることもありません。お間違えのないようにしてください。

 副作用の他にも問題点が3点あります。

問題点1:足の潰瘍の治療では、合併症として心臓や脳の血管などの急変を伴うこともあるので、周囲の病院との連携が必要である。

問題点2:日本が混合治療を禁止していること。

問題点3:自費治療なので、コストが高いこと。

 の3点です。この問題点が解消されれば、夢が広がります。

 

 以上です。胡散臭い治療法だと言わずに一度目を通して下さい。絶対に新しい発見があります。オススメです。

【注意】ネットで「マゴットセラピー」と調べる方は、結構グロい画像がありますので、苦手な人は避けたほうが無難です。

 

糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)