【書評】日野行介『福島原発事故県民健康管理調査の闇』(岩波書店、2013)

 日野行介さんの『福島原発事故県民健康管理調査の闇』を読みました。原発問題は興味を持っている分野なので、とりあえず読んでみることにしました。

 

 県民健康管理調査とは、福島県のHPによると、

(引用開始)東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ、県民の被ばく線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握し、疫病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ることを目的とし、「県民健康管理調査」を実施しています。(引用終了)

 といった調査のことです。

 

 本書の趣旨は以下の2点です。

趣旨1:健康調査を検討する「検討委員会」は約1年半に渡って、一切その存在を知らせることなく「秘密会」を繰り返し開催していた。本会議を行う直前に、「どこまで検査データを公表するのか?」「どのように説明すれば騒ぎにならないか?」「見つかった甲状腺がんと因果関係はない」などと、事前に調査結果の公表方法や評価について決めていた。

趣旨2:検討委員会の議事進行の「シナリオ」を用意し、また議事録の「改竄」までおこなっていた。(70、71頁に見本があります。)

 

 そして、「なるべく被害を小さく見積もろう」、「住民の不安を煽るようなことはしない。住民の安全より不安の除去を優先する」という思想が根底にあるため、上記の秘密会や改竄が行われていました。

 

 確かに、住民の不安を取り除くのは大事ですが、住民の「知る権利」を阻害したり、議事録を改竄したりするのは良くないです。たとえ絶望的な事実が発覚したとしても、データや情報だけは正しく開示してほしい。

 もし、「大丈夫ですよ。」と言われていて、実は情報が操作されていて「実はあの時から分かっていたのですが、あなたは・・・」と言われ、癌(癌の兆候があった)とかだったら、その方が、お先真っ暗になってしまいます。

 

 どっちにしろ騒ぐので、早く情報は出して下さい。政府関係者の方お願いします。

 

 本書は、やっぱりかと思わせる内容が多く、気分も悪くなります。しかし、こういう事実を知らないことが後に、自分の不利益になる可能性もあります。福島県民の方は絶対に読んでおくべきです。

 

 以上です。では失礼します。m(__)m