【書評】辻村英之『農業を買い支える仕組み』(太田出版、2013)

 最近、『(株)貧困大国アメリカ』『食の戦争』『食糧の帝国』などを読み(本ブログにレビューを書きました)、食に関して興味を膨らませていました。食糧の安定が国家の基礎であり、日本はそれがなってないらしいということを学びました。

 「グローバルな現在の制度は変えることはちょっと厳しいので、そのグローバルの取引制度の中に、ローカルな取引制度を作れば良い。」というような趣旨のことを『食の戦争』に書いてありました。妙に納得したものの、具体的にどうするか?をもう少し考えたかったです。

 そして①スローフードと②フェアトレードに目を付けました。大学の図書館に行き探してみると、出版年も新しく、よさげな本を見つけられたので、読んでみました。本書が読みたいならば、普通の本屋さんにはないと思いますので、超大型店に行くか、図書館で根気よく探してみて下さい。

 

 ますフェアトレードを定義します。フェアトレードとは、

「対話・透明性・尊敬に基づいて、貿易におけるより大きな公平さを追究する交易パートナーシップである。社会的に排除された、特に南の生産者や労働者に対して、よりよい交易条件を提供し、彼らの権利を保障することによって、持続的発展に貢献する」(24頁より引用)

 ことです。

 

 本書はタンザニアキリマンジャロ山のルニカ村でのプロジェクト、京都の綾部米の生協産地直送プロジェクト、山形県遊佐町のプロジェクトを通じて、フェアトレードの良さや課題、普及方法を解説しています。

 

 フェアトレードには大きく以下の4つの支え方があります。

支え方①:最低価格の保障

支え方②:還元金の支払い

 の2点です。しかし、農業ですので、凶作になったりします。そうするといくら最低価格が保障されていても、数量が足らないので、食べていけません。そうしたリスクがまだあります。

 ですので、③代金を前払いしたり、④収穫物を全部買い取る(生産リスクの全面負担)を行うという支え方もあります。

(注)本書では③と④は産消連携の支え方の例として書かれており、フェアトレードとは区別していますが、素人はほぼ一緒と考えて大丈夫です。

 

 この4点を駆使して農家を保障します。次にどうフェアトレードを普及させるか?というと、大前提として、理念を共有させることがあります。理念とは例えば、「安全な食べ物を食いたい。」というようなことです。

 そして、普及方法は2点あります。1点目はフェアトレードマークを付け、認知度を上げること。2点目は生協を活用することです。詳しいことは本書を見て下さい。

 

 僕は大学生協で働いていたのですが、フェアトレードマークなんで見たことがありませんでした。気にしたことがないだけかもしれませんが、まだまだ普及しきれていないです。さらにマークだけなら大手会社が悪用できそうです。なにか良い方法はないかな?と探しています。

 

 本書は難しいです。挫折必至なので、万人にはオススメできません。しかし、本気で勉強しようという人ならば、論理的に整理されているので、良い教材になります。