【書評】ジェイムズ・オーウェン、ウェザーオール『ウォール街の物理学者』(早川書房、2013)

 読み物として秀逸。時間を忘れて読めます。「経済や市場の動きを予測する」ことに没頭した天才物理学者・天才数学者の「試行錯誤の物語」が面白いです。

 

 僕は中学の時に『経済物理学の発見』という本を読んで、物理学が経済予測に活かされていることを知りました。文系の僕には内容が難しく、詳しく理解できませんでしたが、データに基づいて実証的に経済を予測していくのが興味深かったのを覚えています。

 本書は時間軸を長く取り、19世紀末から最近までの物理学と経済の関わり合いや市場予測の方法、主人公(キーマン)たちの人生が書かれています。著者の書く文章は読ませる文なので、詳しい専門用語が分からなくとも、挫折することはないでしょう。

 

 本書は物語として読むのも良いですが、これだけは押さえておいてほしいです。これが市場予測の物語の肝でもあります。つまり、「いまのモデルが完成型だと思わないこと。つねに最新の状況を踏まえモデルを改善することが大切だということ。」です。そして、「試行錯誤」に注目し、個々の章を読んでいくと、すんなり理解できます。

 また、違う分野同士が影響を与えあうのも良い。読んでいて自分も色んなことに興味を持とうと思わせてくれます。

 

 「常に改善点を探すこと。」これはビジネス書とかにも書いてあるでしょうが、本書は実話に基づいているので、のめり込みやすく、自分事にでき、色々なことに活かせます。

 

 以上です。物理や経済に興味のある人オススメです。