【書評】『週刊SPA!』原発取材班『原発依存国家』(扶桑社、2013)

 本書は福島第一原発の事故後、「週刊SPA!」とWebサイトの「日刊SPA!」の原発関連記事を厳選して再掲載したものです。

 個人的な意見ですが、週刊誌モノは話半分に聞いたほうが良いです。いたずらに感情を煽ったり、裏が取れないまま載せたりすること(本書に関してはあまり感じませんでした。)があるので。

 

 しかし、本書の指摘はとても有意義です。そこから自分の思考を固めたり、深めたり、新たに調べ直してみたりできます。特に5から26の「福島第一原発は今これだけ混乱している!」と61から72頁の「原発と闘う小さな島の30年史」の記事は示唆に富んでいます。

 

 最初の記事は、原発で働く3人を取材しています。そこから判明した問題点は3点あります。

問題点1:事故収拾にかけるお金が少ないこと。

問題点2:被曝隠しが行われていること。

問題点3:多重下請け構造になっていること。

  問題点1は反原発運動もあり、どんどん減らされているそうです。そもそもお金がないと良い材料の商品が買えず、結局いい加減な修繕になります。

 問題点2は一定以上程度被曝すると、健康を害すおそれがあるので、原発で働けなくなり、路頭に迷ってしまいます。そうして被曝隠しが行われます。これは再雇用のシステムを構築できれば解決できます。

 問題点3は7次8次下請けまで存在し、どんどんピンハネされ、原発労働者は結局満足のいく給料をもらえていないそうです。元請け企業は「余分な従業員を雇わなくても済む」というメリットがあり、下請け企業にも「仕事が舞い込んでくる」というメリットがあり、この下請け構造は安易に批判できません。

 しかし、原発事故の収拾は、緊急性・重要性ともに高いので、原発労働者がいなくては話になりません。満足いく給料をもらい、技術を蓄積し、事故を収めてもらうしかないのです。

 そのためには、3次以下の多重下請け構造を禁止したりする必要があるのではないでしょうか。

 

 以上です。ではこのへんで失礼します。m(__)m