【書評】池澤夏樹『終わりと始まり』(朝日新聞出版、2013)

 

 『終わりと始まり』を読みました。著名な小説家である池澤さんのエッセーはどんな感じなのだろうか?と思い手に取ることにしました。

 本書は朝日新聞の夕刊で月1回連載されているコラムを収録したもので、沖縄の問題や水俣病、電力問題について、その時々のホットな話題、池澤さんの関心のある問題について触れられています。

 

 結論から言うと、僕はこの本は好きになれなかったです。文章はとてもきれいで、ほれぼれします。読んでいて嫌味もないし、達意の文で読みやすいです。しかし、夕刊ともあって多方面に気を配っているせいか、パンチ力がない。読み終わって、何を主張していたのか?と思うと、なんだっけ?となりました。

 

 その中で、「普天間移転問題の打開案」(46頁)は読みごたえがありました。移転先の候補を筆者が探すのですが、「6点の理由からこの島にした。」とあり、なるほど、良さそうに思えてきます。

 このように「思い重視」ではなく、「考え重視」で語ると、説得性が増します。しかし、特に原子力発電関係の記事では、「思い重視」で主張が薄いです。考えが一緒の人ならば良いのですが、違うと納得ができないのです。

 

 短いですが、以上です。個人的には残念でしたが、池澤ファンなら買いです。