【書評】外山滋比古『思考力』(さくら舎、2013)

 外山滋比古さんの『思考力』を読んだ。以前に外山さんの『思考の整理学』を読んだことがあり、その繋がりで本書を手に取った。

 エッセイ風になっていて、肩肘張らずにサクっと読める。この本が言いたいことは主に以下の3点。

①現代は知識編重である。もっと自分で考えよ。

②そのためには、適度な運動と睡眠が大事である。

③思考力がないとアホになるよ。そうなりたくなければ、リスクを取って茨の道を進むべし。

 全体的に、好々爺から、「世の中とはこういうもんじゃ。」と教えてもらうような文体で、教えてくれてやるという感覚がなく、好感がもてる。この本は 大学生や若手社会人が自分はどういう風に生きるか?自分の生き方はこれで良いのか?ということを確認するのに向いている本である。『思考の整理学』と共に、購買に置くべき本である。

 

 僕がこの本で面白く読んだ章は、10頁の「無菌のマウス」です。外山さん曰く、「(引用開始)いまの日本の社会は、知識中心に動いている。最大の問題点は、無意味に高学歴化していることだ。知識や理屈だけで判別して、いいものだけでやっていけば、それはすばらしいことだが、人間はそんなに単純にできてはいない。(引用終了)」とおっしゃっている。

 無菌状態になったのに、逆に危険性が増した。失敗や負けを受け入れられず、どんどんアホになった、と指摘されていて、とても納得しました。

 最近、『はだしのゲン』が閲覧制限を受けたという報道がありましたが、まさに、こういうことです。光の部分だけ教えよう、影の部分は刺激が強く、子供に悪影響を及ぼすから制限しようというように見える。それでは、知識が偏って逆におかしい大人ができあがる。

 社会の上澄みばかり教えていたのでは、実際に社会に出て困る。僕自身はそういう教育は受けたくない。

 そして、誤解を恐れずに言えば、社会のダークサイドは面白い。興味をそそられる。どんどん知りたいとし、知ったら何かをアウトプットしたい。それを続ければ、外山氏の「思考力」に繋がるはずである。

 

 では、このへんで失礼します。m(__)m