【書評】奥山清行『100年の価値をデザインする』(PHPビジネス新書、2013)

 奥山清行さんの『100年の価値をデザインする』を読みました。奥山さんが「イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした人」ということを知っていたということと、『人生を決めた15分 創造の1/10000』や『伝統の逆襲』が面白かったことから、本書を読んでみることにしました。

 

 序章で奥山氏は「日本人はクリエイティブに対して間違った見方をしている。」とおっしゃっています。さらに、日本人としてのセンス以外に、先天的なクリエイティブな能力の差など、ほとんどない。クリエイティブなことを可能にするのは、後天的なセンスと、経験から得たスキルである、ともおっしゃっている。

 僕たちも頑張ったら、氏のようにうっとりするデザインが書けたり、センスを発揮できるということです。希望が持てますね。でも、なんで氏の商品はこんなにカッコいいんでしょうか?本書の最初のページに載っていますが、奥山さんの商品が家においてあったら、モテし、惚れる。

 

 では、前述の日本人のセンスとは何でしょうか?それは主に以下の3点あります。

センス1:相手の気持ちや周囲の状況にものすごく敏感であること。

センス2:日本語を使った表現と思考能力に秀でていること。

 日本語は情報を伝える機能よりも、自分の今の感情、ポジションなどを表現する機能に優れていること。

センス3:切り捨てて、洗練していく文化の土壌があること。

 の3点です。

 そして、後は「量」をこなすことを推奨されています。氏の代表作のひとつである「5代目のマセラティ・クアトロポルテ」という車をデザインした時には、「毎日20枚くらいのペースで3カ月から4カ月描き続けた。(33頁)」そうです。

 

 これを聞くと日本人で良かったと思いますが、悪いところも当然あります。議論が出来ないということです。デザインは「ものを作るために意見を集約する仕事である。誰が何を欲しがっているかを明確化し、それを具現化していくプロセスといえる。(58頁)」そうなので、議論ができないのは致命的です。

 

 本書には、丁寧にも、議論ができるようになるためにはどうするか?が書かれてるので、参考にしてみて下さい。

 

 本書は、奥山ファンの人、美しいデザインを見てうっとりしたい人、カッコいいおじさんの思考を垣間見たい人にオススメです。

 

 以上です。それでは失礼します。m(__)m