【書評】佐高信・佐藤優『世界と闘う「読書術」』(集英社新書、2013)
佐高信さんと佐藤優さんの『世界と闘う「読書術」ー思想を鍛える1000冊』を読みました。佐藤優さんが前に立花隆さんと同じような本(『ぼくらの頭脳の鍛え方』(文春新書、2009))がためになったので、読んでみることにしました。
最初に注意です。「読書術」という題名が入っていますが、世間一般的な読書術は書かれていません。佐藤さんと佐高さんがあるテーマについて、本を用いて(本を下敷きにして、道具にして)語っているという本になっています。読書術を読みたいなら、佐藤優さんの『読書の技法』を読みましょう。
正直に白状すると、この本に書かれていることの1割も理解できません。難しすぎます。例えば、第1章の宗教・民族と国家では、ただでさえ日本人が宗教に弱いのに、カトリックの世界戦略について、ベネディクト16世が生前退位した理由とか言われても訳が分かりません。
ただ、分からないなりに読んでいると、良い分析(僕にも納得できる分析)があります。220頁に社畜とブラック企業について書かれているところで、「ノマド」が若い人を中心に注目されている。これも方向性としてはもう国家に何も期待しない、期待できないという危機意識の表れではないか?と。しかし、非正規労働者が1/3を超えている現状を考えると、ノマドを選んだつもりが、労働者の連帯からも外れて、一方的に使い捨てされるだけの結果になりかねない。と分析しています。
そしてこの分析からチェコの作家のラジスラフ・フクスさんが書いた『火葬人』という作品を肴に社畜化の現状を読み説いたりしています。
この本の使い方としては2点考えられます。
①純粋に、「このおっさんたちスゲー。」と関心する。できれば俺もこの人たちのようになりたいというモチベをもらう。
②自分の興味ある分野の興味を持った本をちょっとだけ読んでみる。
という2点でしょう。
尤も、知的水準の高い人は佐藤さんと佐高さんの分析と自分の分析を比べてみるのもありでしょう。
以上です。では、失礼します。m(__)m
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 10人 クリック: 361回
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【書評】佐藤オオキ・川上典季子『ウラからのぞけばオモテが見える』(日経BP社、2013)
佐藤オオキさんの『ウラからのぞけばオモテが見える』を読みました。本書は書評サイトの「honz」さんで、ライフネット生命の社長の出口治明さんが読みたい本として挙げられていたので、読んでみることにしました。(このページの一番下)
また、実際に本屋さんに行って、立ち読みすると、うっとりするようなデザインの写真が載っていたので、これだけでも読む(眺める)価値があると思い購入しました。
デザインとは何でしょうか?「奇抜な形を作る」ことでも、何かを「カッコよく見せる」ことでもありません。問題解決のための「新しい道」を見付ける作業、と氏は言います。さらに48頁には、日常の中でひっかかってくるもの、違和感を感じるもの・・・全身が『フィルター』のイメージです。日常のなかで空気や水のように身体を通り抜けていく要素がある一方で、フィルターにひっかかってくるわずかな差異のようなものがあります。ひっかかったものが小さければ小さいほど良く、『すごい』ものである必要はありません。という前置きがあった後、微細なものたちを丁寧に集めることで形作られるもの、これが自分にとってのデザインです、と書かれています。
本書には、商品を開発した時に気を付けたこと、その時に感じたひっかかったものや、違和感が書かれており、上記のデザインの真髄を感じることができます。
また、本書にはTIPS的なものも書かれています。
①一歩「下がる」、②均衡を「崩す」、③見せたいものは「隠す」、④そこにあるものを「使いまわす」などが、佐藤さんのデザインの肝であるように感じます。
nendoでは、プロジェクトを育てるにあたって、70点のアイデアをたくさん見つけること、クライアントの期待を超えるプレゼン資料を「3倍速」でまとめることを重要視しているそうです。(204頁)この心得は、岩瀬大輔さんの『入社1年目の教科書』にも書かれており、社会に出ても役に立つ教訓と言えるでしょう。
では、短いですが、このへんで失礼します。m(__)m
ウラからのぞけばオモテが見える―佐藤オオキ/nendo・10の思考法と行動術―
- 作者: 佐藤オオキ,川上典李子,日経デザイン
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【書評】フアン・カルロス・クベイロ、レォール・ガジャールド『グアルディオラのサッカー哲学』(実業之日本社、2011)
『グアルディオラのサッカー哲学』を読みました。なぜ、グアルディオラさんが優秀な監督になれたのか?が知りたかったので、読んでみることにしました。
グアルディオラさんはスペインのサッカーチーム「バルセロナFC」で活躍し06年に引退、監督としてバルサに戻ってきてバルサBチームを率いた後、トップチームの監督に就任します。監督経験の浅さが懸念されましたが、そんなものをふっとばして優勝してしまいます。
バルセロナというチームについて一応説明をしておくと、スペインで1,2を争うほど強く、攻撃的なサッカーをするチームです。現在ではプジョルやメッシやシャビといった有名な選手が所属しています。
本書の7章を読むと、なぜグアルディオラさんが勝ち続けられるのかが分かります。9つの条件に分けられていて、①物事を明確にすること、②信頼すること、③平常心を保つこと、④失敗から学ぶ謙虚さがあること、⑤相手をリスペクトすること、⑥集中力を高めること、⑦何が大切かを知っていること、⑧謙虚さを忘れないこと、⑨感謝すること
その上で、相手チームのビデオを徹底的に研究する。もうここまでされたら勝てないと思う。さらに、エトーを放出する際には、「彼の貢献が3冠に影響したことを認め、でも、チームのためには必要な決断とし、悪影響が出たら、そのときの覚悟はできている。」とまで発言する。こんな強烈なリーダーシップも持ち合わせています。
先日、ラミレス選手(元巨人などで活躍した野球選手)の『ラミ流』を書評しましたが、なんとなく活躍する人の特徴がつかめたような気がします。「準備」と「謙虚さ」ではないでしょうか。
では、このへんで失礼します。m(__)m
- 作者: フアン・カルロス・クベイロ,レオノール・ガジャルド,今井健策
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2011/01/20
- メディア: 単行本
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【書評】瀧本哲史『君に友だちはいらない』(講談社、2013)
瀧本哲史さんの『君に友だちはいらない』を読みました。
瀧本さんは、東大法学部卒業後、東大法学部の助手として働いた後、マッキンゼーに入社し、例のごとく独立します。独立した後、日本交通の再建に携わり、エンジェル投資家として活動しながら、京大の准教授をしている方です。
僕は正直言えば、瀧本さんの『僕は君たちに武器を配りたい』を読んだ時は、「すごい面白いことを書くおっさんが出てきた。」と思っていましたが、『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』を出す時には、彼自身がコモディティ化してしまったと感じました。『僕は君たちに武器を配りたい』だけで良かったのでは?とさえ感じました。
「世界規模でグローバル化が進んだおかげで、あらゆる商品・サービス・人材がコモディティ化した。だから個性を出せ。トレーダーとエキスパートは衰退する。」というのが彼の主張でした。
それが今回の本では「チーム」について書いたらしいと。もうこの本が面白くなければ、絶対次回からは買わないと誓い、題名に惑わされ読んでみることにしました。題名の付け方がセコい。手に取ってみたくなってしまう。(-_-;)
まず手始めに、天動説はどうして消えてしまったか分かりますか?地動説の科学的根拠を皆が信じたからですか?違うんです。天動説を信じていた人が死んで、地動説を信じる若者だけが残り、次第に地動説を信じるものだけになったからです。ここから、瀧本さんは「世の中を変えるのは世代交代だ!」と説きます。では、どうやって世界を変えるのか?答えは「チーム(秘密結社)を作る」ことである。
よいチームには5つの条件があります。これは瀧本さんが考えたものではなく、マッキンゼーのジョン・R・カッチェンバックさんとダグラス・K・スミスさんが考えたもので、『「高業績チーム」の知恵』に詳しく記されているそうです。つまり、
条件1:少人数である
条件2:メンバーが互いに補完的なスキルを有する
条件3:共通の目的とその達成に責任を持つ
条件4:問題解決のためのアプローチの方法を共有している
条件5:メンバーの相互責任がある
の5つです。
さらに瀧本さんは良いチームにするために気を付けるべき点を挙げています。僕が納得した点をいくつかあげます。
①見晴らしの良い場所に行け。(133頁)
見晴らしのよい、というのはその会社が扱っている商品やサービスを通じて、業界全体を取り巻く状況を含めて、広く理解できるという意味です。その職場に行き、良い仕事をしている人と関係を構築し、彼らに学んでいけば、強いネットワークができる、と説いています。
②「私は○○な人間です」ラベリングから仲間づくりははじまる(229頁)
③「業界軸」「会社軸」「競合軸」「自分軸」でラベリングする(232頁)
の3点です。
特に、②と③は詳しい説明が本書にあるので、自分でやってみると有用な効果が得られるでしょう。
最後に『君に友だちはいらない』という題名のネタバレがありますが、あんまり期待しない方がいいです。途中で分かりますので。
本書は瀧本さんの前の著書のように、章のまとめが章の最後に載っています。とても分かりやすいまとめなので、忙しい人はそこだけ読んでもいいと思います。また分からなくなってしまった時やこんがらがってしまった時にも役に立つので、まとめは評価できます。
ただ残念だったことは、本書が20~30代を対象にしているにも関わらず、ハードカバーで1700円と高かったことです。大学生をメインターゲットのひとつにしているなら、著しく高いので、新書で800円くらいで売ったほうが良いです。
以上です。まあまあ面白かったので、次も買います。
本の大量処分から生存した書籍5冊
来年に引っ越すことが決まり、引っ越しの見積もりをお願いするにあたって、書籍を大量に処分することにしました。実家に本を送り返すことも考えましたが、冊数があまりにもあること、重量があるため料金が高いこと、実家に収納スペースがないことから、処分することにしました。
今回の処分対象は、①もう読まないもの、②ここ2年で溜まったもの(これがほとんど)、③資格の参考書など(TOEICや宅建など)の3点。処分対象から免れたものは、①卒業論文の資料になる本、②就職活動関係の本(後輩にあげるかもしれないため)の2点です。
上のように本の整理の条件を決め、実際に整理を開始すると、どこからともなく出てくる出てくる。大小様々なダンボールに10箱も処分対象の本が出てきました。そして某古書店Bさんにアポを取り、処分の日を決めました。
ここで、BOOKOFFさんのサービスを説明しますと、本が多すぎて店舗に持っていけない場合は、①店の人に来てもらいその場で現金にしてもらう方法、②店の人に来てもらうものの、後から口座に振り込んでもらう方法、③宅配便で送りつける方法の3種類の方法から、自分が選ぶことになります。(詳しくはこのページに載っています。)
換金してもらったところ、331冊(値段のつかない本3冊を除く)で1万円を超えました。やったぜ。これでオカズが一品増える。
本題に行きます。残した本は以下の5冊です。
①リチャード・ムラー『サイエンス入門Ⅰ』(楽工社、2011)『サイエンス入門Ⅱ』(楽工社、2012)
カリフォルニア大学バークレー校で「学生が選ぶベスト講義」に選ばれた、科学入門講義の決定版。原子力の部分だけでも読む価値はあります。
②finalvent『考える生き方』(ダイヤモンド社、2013)
極東ブログの著者が書いた本。著者のようになりたいと思い残しました。
③谷岡一郎『社会調査のウソ』(文春新書、2000)
言わずと知れた名著。データを扱うとき、読むときに、注意するべきことが分かります。
④ロルフ・ドベリ『なぜ、間違えたのか?』(サンマーク出版、2013)
本ブログに書評があります。(書評)
⑤内藤國雄『棋聖天野宗歩手合集』(木本書店、1992)
趣味の本です。これを並べずして何を並べるのでしょうか?僕の棋風、棋力はこの本によるところが大きいです。
以上です。では、失礼します。
- 作者: リチャード・A.ムラー,Richard A. Muller,二階堂行彦
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2011/10/04
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- 作者: リチャード・A.ムラー,Richard A. Muller,二階堂行彦
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2012/06/01
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- 作者: finalvent
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/02/21
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「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
- 作者: 谷岡一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/06
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【書評】星覚『坐ればわかる』(文春新書、2013)
星覚(セイガク)さんの『坐ればわかる』を読みました。
題名を見て、なぜ、「座れば~」じゃないのか?とふと思いました。そこで調べてみると、「座る」:人が座る場所のことで、「坐る」:座る動作を示す、という違いがあるそうです。常用漢字を決める際に、「坐る」が統一されました。
著者の星覚さんは慶應義塾大学を卒業し、永平寺で3年間修行し、いろいろあったあと、ベルリンでの禅道場が大いに人気を博しました。現在は30過ぎで、アパートで妻子とともに過ごしています。
禅の本やお坊さんの本は90歳くらいの長老がありがたいお言葉を100個載せて終わり、人生体験が少ないので、読んでも「ありがたいお言葉やな~。」で終わっていました。その点、若いお坊さんなら、親しみやすいのではないかと考え読んでみることにしました。
本書の要点は3点です。
要点1:体の仕組みを知りましょう。
要点2:各部分について意識するべきところを知りましょう。
要点3:実際にやってみて、ちょっとづつ直していきましょう。
そうすることで、いい生活を手に入ればしょうという流れになっています。
『正方眼蔵』(ショウボウゲンゾウ、道元が書いた仏教思想書)や、著者が学生時代に学んだハリウッドも学ぶ演技メソッドや永平寺での経験から、どういう風に整えていけばいいのかが書かれています。もう少し図解して欲しかったのですが、それでも十分分かりやすい説明がされています。
本書を読んだら、禅体験をしてみたくなりました。迷いが減るのとまでは行きませんが、ちょっとは楽になります。
「ドイツで活躍しているお坊さん」の話だけでも面白いこと間違いないのに、実生活にも役に立つ。これは読むしかありません。精神的に参っている人に特にオススメです。
以上です。ではでは、失礼します。
【書評】溝口敦『暴力団』(新潮新書、2011)、溝口敦『続・暴力団』(新潮新書、2012)
溝口敦さんの『暴力団』『続・暴力団』を読みました。
僕は北野武さんのヤクザ映画が大好きです。「アウトレイジ」や「その男、凶暴につき」「3-4x10月」などで見るあの世界は本当なのか?銃を連射して虫けらのように惨殺するのか?暴力団同士の抗争は本当にあるのか?が知りたく、読んでみました。また、本記事では、『暴力団』を正編、『続・暴力団』を続編と書くことにします。
正編のまえがきにこのような一節があります。
「山口組トップの組長が、2011年4月に府中刑務所を出て神戸に帰るときには、東海道新幹線のグリーン車両1両丸ごとの座席を買い切りました。(5頁)」
まさに、僕の抱く暴力団の親分のイメージです。全部買うといくらくらいになるんでしょうかね。あと、トイレとかで一般の人がその車両を通る必要があるときは、どうしたら良いのでしょうか?良くわかりません。
ヤクザの儲け方は4種類あるそうです。覚醒剤、賭博・闇カジノ、みかじめ、解体と産廃処理の4種類です。不況である現在、産廃処分料はできるだけ抑えたい。一方、暴力団は産業廃棄物はちょっとだけ適切に処理して書類をごまかし、残りをどこかに捨てることで安く請け負うことができます。そうしてどんどん儲かるそうです。
暴力団は良くない存在ですが、暴力団の存在を認める法律があります(暴対法)。しかも、警察は暴力団がいた方が便利で、警察の利益にもなります。しかし、暴力団排除条例では暴力団の生活権を否定する条項が含まれています。居住用マンションが借りれなかったり、銀行口座が開設できなかったりということです。
こうしてだんたん暴力団への風当たりが強くなり、従来の暴力団の数は減り、半グレ・マフィア化した暴力団が増えました。本書にはマフィアや半グレとの違いも書かれています。
また、出会った時どうするかについても書かれていて、そこも興味深く読めます。
本書は暴力団のことについて手っ取り早く網羅的に調べられる本です。暴力団について興味がある人にオススメです。