2015卒就職活動生に対するささやかなアドバイス3つ

 僕は2014年度卒の就職活動組として就活をしました。そして運よく今の内定先に拾って就活を終えることができました。

 今日は12月1日、15年卒の就活の解禁日です。ということでささやかなアドバイスを送ることにしました。これはtipsのようなもので、もし、「就活の仕組みがおかしいとか」、「俺が変えてやるみたいなもの」を期待しているなら、ご希望の記事ではありませんので、ブラウザの戻るボタンを押してください。m(__)m

 

 また、12月にするアドバイスと例えば面接が開始された4月にするアドバイスは当然のことながら違います。今からする助言は12月にするアドバイスで、これから始めようとする人を対象としています。

 アドバイスは3つです。

①説明会は出れるだけ出ること。

②妥協しないこと。

③友だちと上手に助言をし合ったり、息抜きをすること。

  ①に関しては、自分が思っている以上に、世の中には業種があり、会社があります。「金融」だけでも、メガバンクUFJとかみずほとか)、地銀、生命保険、損保、リース、消費者金融、証券会社、政府系金融、企業グループ内の金融業を担っている会社(例:○○ファイナンス)などがあります。

 自分は金融に行きたいと思っていても、それでは絞り切れていません。また、思わぬ分野で向いているところがあるかもしれません。説明会に色々行き、自分にあった分野を探しましょう。

 ②に関しては、例えば、新聞社に行きたいとします。ただ漠然と、「俺は○日新聞に行きたい。」と思い、マスコミ対策本を読んだところで、マスコミ予備校に行き、OB訪問をしている奴に勝てる訳はありません。本気で行きたいのなら、出来る限りのことをするべきです。絶対に後で後悔します。

 ③に関しては、忙しいからと言って、友だちとの付き合いを減らすのは良くありません。就活中はとても不安になりますし、自信も無くなります。その時にひとりで悶々と考えていても鬱になるだけです。友だちと遊ぶことで、少しは気が紛れますし、助言も貰える(当然、こちらからも与えなければいけない。)ので、遊ばない訳はありません。

 

 以上です。参考になれば幸いです。

胡散臭いと思うなかれ-【書評】中山智弘『元素戦略』(ダイヤモンド社、2013)

  差し迫る危機とは何か?そのひとつが「元素危機」である。

 今後の自動車産業の主軸となるハイブリット車や電気自動車に必ず使われるネオジム磁石が使われている。そのネオジム磁石を作るには、希少元素の「ジスプロシウム」が必要である。また、液晶テレビや有機ELテレビ、あるいは太陽電池には現在、ITOと呼ばれる透明電極が使われており、それを作るには「インジウム」という希少元素が必要である。

 このように、現在では、日本が世界に誇る製品を作るには、希少元素が必要不可欠になっている。しかし、その希少元素は、①供給量がきわめて僅少であること、②先端製品に必要不可欠なこと。③資源国が非常に偏っていること、の3点から供給が早くも先細りしている。これが元素危機である。

 この希少元素不足を解消する運動が、元素戦略と呼ばれており、オールジャパン体制で進められている。そのプロジェクトについてまとめられたのが本書である。

 

 希少元素を調達する方法は3つある。

①どこかから(海外とか海底などから)探してくる。

②リサイクルしてもう一度使う。「都市鉱山」といわれる奴である。

③科学を駆使して作り出す。

 例えば、使わなくなった携帯電話から、希少金属を取り出すのは②であり、日本近海に○○が大量に埋まっているという話は①である。

 

 信じがたいことに『元素戦略』に書かれている話は③である。「錬金術じゃないんだから(笑)。」「ニュートンが晩年に嵌った胡散臭いやつやん(笑)。」と言われそうだが、それを大真面目にやっているのである。

 それでは、語弊を招くので、もう少し丁寧に解説すると、元素戦略の核は次のようなものになる。  

「元素」そのものを錬金するのではなく、「製品に必要な希少金属の特定の『機能』を別の元素で置き換える」こと。(まえがきより)

 

 では、具体的にどのように元素を作り出すのか?それは20頁以降に書かれている。そのうちのひとつが「元素間融合」と呼ばれているもので、元素Aと元素Cを混ぜることで、その真ん中に位置する元素Bの機能・性質を持つ元素を産み出すというものである。(本書では、ロジウムと銀を混ぜることで、パラジウムの機能を産み出したと紹介されている。)

 

  また、本書には、「元素戦略」はどのように進められてきたのか?どの分野が熱いのか?などが書かれている。元素戦略が面白いと思った若い学生は、巻末の付録にどの研究者がどういう研究をやっているのかまで載っているので、自分の進路の参考にもできる。

 

 最初は、胡散臭いと思って読んでいたが、だんだんと中央省庁が絡んでいたり、大御所の学者が関わっていたりと、そのスケールの大きさ、この戦略の大切さが分かるにつれて、そうでもないと思うようになった。最初の数章がとても興味深く、満足した。結構、今年は科学の本は読んだが、その中でも最高の出来で、読んでいてワクワクする。名著である。

元素戦略  科学と産業に革命を起こす現代の錬金術

元素戦略 科学と産業に革命を起こす現代の錬金術

 

 

【書評】東浩紀編『福島第一原発観光地化計画』(genron、2013)

  東浩紀さんが編集した『福島第一原発観光地化計画』を読みました。本書は思想地図β4-1の『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』の続編となっています。B5版190頁フルカラーで写真や論考が満載で、とてつもない情報量の一冊になっています。

 

 「福島第一原発観光地化計画」とは、福島第一原子力発電所の跡地を、後世のため「観光地化」するという計画のことです。「観光地化」とは、事故跡地を観光客へ開放し、だれもが見ることができる、みたいと思う場所にするという意味で用いています。遊園地を作る、温泉を掘るという短絡的な意味ではありません。

 提言の軸は、福島第一原発から南に20キロ、広野町と楢葉町の境界に位置するサッカートレーニング施設「Jヴィレッジ」の大規模な再開発です。2020年に「Jヴィレッジ」で災害復興博覧会を開催すること、同地区へのアクセスを改善することを目指しています。そして行く行くは、2036年までに、ビジターセンターと博物館、ショッピングモール、ホテル、展示施設などからなる巨大な「ふくしまゲートヴィレッジ」を建設することです。

 

 ふくしまゲートヴィレッジを作るにあたって、ガイドさん・宿泊施設・食・モニュメント・博物館など色々必要なものが入ります。それを一から考え設計し、専門家に問い合わせ実現性を探り、実現性を高めていくさまが書かれています。

 97頁には、ふくしまゲートヴィレッジの地上階の平面図が挙げられていて、ここまでやるのかと驚愕しました。

 

 補遺には、復興の5つのポイントが書かれていてとても参考になります。これは著者がチェルノブイリから西に80キロ以上離れているコロステン(放射能汚染からの復興例として注目を集めている市)に再訪した時に、副市長から聞いたものです。

①徹底した放射線量モニタリング

②公衆衛生状態の監視

社会心理学的なケア

④経済発展の促進

⑤さまざまな地域と協力体制を築き、合同で優先事項を決めること

 この5つです。

これを福島第一原発観光地化計画に当てはめると、かなり良い計画だと言えます。

 

 以上です。情報量も多く、実際に良く詰められている計画という印象も持てます。多角的に考えられていて、参考になるところも多いです。オススメです。

 

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2

福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2

 

 

【書評】渡辺明『勝負心』(文春新書、2013)

  渡辺明さんの『勝負心』を読みました。僕は趣味で将棋をしています。渡辺先生は次世代のエースとして活躍されていて、強烈な強さを持っているという印象を持っています。若手の代表格である渡辺さんが何を考えているのかが知りたかったので、読んでみることにしました。

 

 

 渡辺先生について説明しておきますと、将棋界の主要7タイトルのうちの「竜王」とタイトルを9連覇され、現在は竜王と棋王と王将の3タイトルを所持されています。また競馬を趣味としています。

 

 やはり、渡辺さんを語る上で欠かせないのが、羽生さん(羽生善治、将棋界の神様的存在)ですが、将棋関係者には知っている内容も多いので、あまり収穫はなし。

 

 ですので、渡辺先生の思考が端的に表れている箇所を何個か挙げて終わりにします。

思考法1:秘策は温存せずにすぐ使う。(27頁)

 なぜなら、温存しても、試す機会を逸する恐れがあるから。作戦が上手くいかず負けても、失敗が未然に防げるから。

思考法2:「調子」という概念はない。(96頁)

思考法3:勝負を決めるのは事前準備。(105頁)

思考法4:「想定外」を想定する。(119頁)

 相手の次の一手を読む時に、3つ読むそうです。ひとつ目は、本筋の一手。ふたつ目は、裏切りの一手、勝負手。みっつ目は、奇想天外のリスキーな一手。3つ目を読むことで、気持ちに余裕が生れるのだ。

 

 また、最近話題のコンピュータ将棋について書かれていたり、事前準備における将棋のデータの扱い方について書かれていたりしていて、興味深い内容となっています。

 

 以上です。では、このへんで失礼します。

勝負心 (文春新書 950)

勝負心 (文春新書 950)

 

 

【書評】岡田匡『糖尿病とウジ虫治療』(岩波書店、2013)

  岡田匡さんの『糖尿病とウジ虫治療』を読みました。僕がいつも読んでいる書評サイトの「honz」さんでちょっと前に紹介されていて、面白そうなので、いつか読みたいと思っていました。そしたら、先日、別件で大学図書館に行ったときに、新刊コーナーに置いてあったので、読んでみることにしました。

 

 ウジ虫と聞くと、とてつもなく気持ち悪いイメージがあります。(参考画像、wikiページ)honzさんにも書かれていましたが、「はだしのゲン」や戦争の写真で傷口にわく大量のウジ虫を見て、トラウマになったのは、僕だけではないはず。

 そんなウジ虫が傷口を治す効果を持っているというのです。

 

 糖尿病性潰瘍の治療に有効で、海外では床ずれ、深部組織におよぶ外傷、感染をともなう術後創、切断端、熱傷潰瘍、下腿潰瘍、慢性骨髄炎などにも広く使われています。なぜ効くのか?というと、ウジ虫は死んだ細胞、組織を食べ、分泌液にも抗菌作用があるからです。

 当然、この治療にも問題点はあります。深刻な副作用は見られないものの、一過性の発熱や、痛みを感じること、出血(1%以下の頻度)が報告されています。良く誤解されるようですが、「体内にウジが自然に寄生する」というのは、まったく別の種がもらたす真性寄生性の病気だそうです。この治療に使われるハエは、人間が宿主ではないので、住みつきもしませんし、ウジになることもありません。お間違えのないようにしてください。

 副作用の他にも問題点が3点あります。

問題点1:足の潰瘍の治療では、合併症として心臓や脳の血管などの急変を伴うこともあるので、周囲の病院との連携が必要である。

問題点2:日本が混合治療を禁止していること。

問題点3:自費治療なので、コストが高いこと。

 の3点です。この問題点が解消されれば、夢が広がります。

 

 以上です。胡散臭い治療法だと言わずに一度目を通して下さい。絶対に新しい発見があります。オススメです。

【注意】ネットで「マゴットセラピー」と調べる方は、結構グロい画像がありますので、苦手な人は避けたほうが無難です。

 

糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

糖尿病とウジ虫治療――マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

 

 

【書評】津田敏秀『医学的根拠とは何か』(岩波新書、2013)

 津田敏秀さんの『医学的根拠とは何か』を読みました。帯に「福島、水俣、薬剤データ改ざんーすべて根は同じ」と刺激的なことが書かれており、原発問題に興味を持っている僕としては、読まないという選択肢はないので、読んでみることにしました。

 僕は卒業論文でエネルギー問題を書こうとしており、その時に、放射線の「年間100mSv以下で健康に問題が出るのか?ガンになるのか?」という問題があります。色々調べていると、 「統計的に有意ではない。」「健康に影響はない。」「ガンになった人もいる」など様々な意見が飛び交って、締切は近づくわ、どっちか分からないわで、発狂しそうになりました。「一体、お前たちは、どの根拠に従っているのか?」と思うわけです。

 

 ということで、訳の分からない医学的根拠の実体を探っていきます。

 その前に、医学的根拠は3種類存在しているとしています。①直観派②メカニズム派③数量化派の3つです。直観派は医師としての個人的な経験を重んじる人たち。メカニズム派は動物実験や遺伝子実験など、生物学的研究の結果を重視する人たち。数量化派は、統計学の方法論を用いて、人間のデータを定量的に分析した結果を重視する人たちです。

 この3種類の宗派が侃侃諤諤の議論をし、20世紀後半にやっとこさ、国際的な合意が出来上がります。EBM宣言と呼ばれるものです。

 EBM宣言とは、「根拠に基づいた医学は、直観、系統的でない臨床実験、病態生理学的合理づけを、臨床判断の十分な基本的根拠としては重要視しない。そして、臨床研究からの根拠の検証を重要視する。」(37頁)

 この宣言以来、統計分析ツールとしてのパソコンやインターネットの発達もあり、EBM宣言はどんどん広がっていきます。

 しかし、日本ではまだ浸透していません。「直観、系統的ではない臨床経験」を重視する直観派の医師の理解が得られないし、メカニズム派の医師や医学研究者が多いからです。

 

 さらに、僕の冒頭の100msvの問題は、98頁に答えがあります。「有意差がない」というのは、「影響がない」というのと違うのだそうです。

 

 最後に、医学界への提言までされています。「統計学を勉強せよ。」そして、「自分でデータを分析した論文を読み解き、現場で集めたデータを自分で分析して論文に仕上げる能力を身につけよ。」と提言されています。

 

 医学関係者でないと、ちょっと難しい箇所はありますが、それを抜きにしても力作です。ちょっとでも医学的根拠を疑っている人なら絶対に買いです。刺激的な箇所も多く、役に立つ箇所も多いのでオススメです。

医学的根拠とは何か (岩波新書)

医学的根拠とは何か (岩波新書)

 

 

【書評】池上彰『池上彰のニュースの学校』(朝日新書、2013)

 池上彰さんの『池上彰のニュースの学校』を読みました。

 

 本書の目的は、受け身」の姿勢ではなく、常に問題意識を持って、自分なりに理解することです。」

 そのために、新聞・雑誌・本から池上さんオススメの方法が書かれています。そして、その土台として、教養を身につけることが勧められています。74頁からは経済ニュースを、90頁からは政治のニュースを読むための基礎知識も載っていて、親切な本です。解説の内容は、池上さんの得意分野ということもあり、とても分かりやすいです。

 

 以下は、TIPSです。

1. 朝、新聞にサクッと目を通す。夜、改めて読み直し、気になる記事は破って取っておく。溜まってきたらファイリングする。

2. 複数の経済誌を読む。特に特集記事を中心に読む。

3. 「定本」を探す。書籍代はケチらずに使う。

4. 学校の教科書を上手に利用する。日本史Aや世界史Aがオススメ。

 これは佐藤優さんの主張と同じです。しかし、教科書は面白くないんですよね。日本の教科書は先生のレベルが高いからだみたいですが、それにしてもつまらない。

5. 小さな記事から大きな流れを掴む。ベタ記事に注目する。

 

 最後の佐藤優さんとの対談も良い。いつもながらの切れ味です。

 

 「俺、教養ないんだ。」と嘆く前に本書をまず読んでみましょう。絶対ヒントがあります。新社会人や若手、海外に飛ばされる予定の方などにオススメです。

 

 以上です。では、失礼します。m(_ _)m

 

情報を200%活かす 池上彰のニュースの学校 (朝日新書)

情報を200%活かす 池上彰のニュースの学校 (朝日新書)